「これはFA補強に備えた『プロテクト外し』と言われても仕方ありません」 こう断じるのは、プロ野球選手会の森忠仁事務局長(60)である。■「選手の弱い立場を利用した脅し」 巨人が23日に梶谷隆幸(34)、立岡宗一郎(32)、中川皓太(28)、高橋優貴(25)、平内龍太(24)ら11選手に自由契約を通達。同時に全11人に対して育成契約を打診する見込みとの報道に、森事務局長は「巨人の都合で選手を大量に育成契約にして、球団と選手が対等でないという憤りを感じます。人的補償はFA移籍による戦力ダウンを補う制度で、『戦力均衡』のためにあるのに、毎年隠れみののように使う球団があるのは、制度に問題があるということ。人的補償を育成選手からも指名できるようにするとか、早急にルールを変える必要があります。昨年も言いましたが、これは選手の弱い立場を利用した脅し。まだ私案ですが、巨人、もしくは全球団に対し、抗議文を提出することも検討しています」と怒りをあらわにするのだ。 選手がFA制度で国内球団へ移籍した場合、移籍元のチームは移籍先のチームから金銭やプロテクトされた28人以外から選手を獲得することができる。この「人的補償」には育成選手は含まれないため、ネット上ではファンも「ずるい」「汚い」「姑息」「プロテクト対策」「人的補償逃れ」などと巨人への批判を強めているのだ。■FA入団梶谷、中川らの主力も 巨人は2020年に19年ドラフト1位入団の堀田、17年ドラフト1位の鍬原を育成選手として再契約し、話題になった。このオフにFAを含めた大補強に乗り出す今回はもっと露骨で、“戦力外”とされた選手は一軍の主力クラスがズラリ。 梶谷はDeNAからFAで加入した1年目の21年10月に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けた。復帰を目指していた今年5月には左膝内側半月板縫合手術を受け、今季出場はなかった。とはいえ、FAで加入した選手が移籍先で育成選手となるのは前代未聞。年俸2億円の育成選手なんてバカにするにもほどがある。 昨季まで勝ちパターンの絶対的なセットアッパーだった中川は、2月のキャンプ前に痛めた腰の状態が戻らず、今季の登板はなし。昨季11勝でチームの勝ち頭だった高橋は、9月に左肘のクリーニング手術、立岡は6月に左膝前十字靱帯再建手術を受け、現在リハビリ中。今季セットアッパーを任された平内は、11月1日に右肘のクリーニング手術を受ける予定となっている。故障が癒えれば戦力になる選手を育成契約にして、補強のために支配下枠を確保する魂胆が見透かされているのだ。
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