大会組織委員会 静岡地域支部長 藤原直宏さん
静岡県はJリーグや高校サッカーの名門の存在感が大きく「サッカーどころ」のイメージが強いですが、ラグビーもワールドカップ(W杯)に向けて機運が高まっています。2002年のサッカーW杯の盛り上がりをエコパスタジアム(袋井市)で目の当たりにした、かつてのスポーツ少年たちが今、大会組織委員会の中核を担っています。同じ会場で、今度はラグビーW杯を成功させようと奮闘しています。
エコパスタジアムは元々、02年サッカーW杯に向けて01年に建てられました。ラグビーW杯に向けて大型スクリーンや音響、トイレなどを更新したほか、超高精細映像4K、8Kによるテレビ中継で試合を楽しめるよう、照明をLED化して場内の明るさを1・5倍にしました。
大会を盛り上げるための合言葉は、「フルスタジアム」です。開催12会場の中で日産スタジアム(横浜市・収容人数7万2327人)に次いで2番目に多い5万889人を収容できるエコパスタジアムを満員にし、お客さんに「さすがW杯だ」と思ってもらうことが目標です。エコパスタジアム周辺では、「2019人のパスリレー」と題してラグビーボールを手渡しでつなぐイベントやキック、トライの体験イベントを開いて機運を高めています。
静岡県は、全国の大会開催地域の中でも特に子どもたちへの普及に熱心です。若い世代の人たちに世界トップの試合を生で見てもらい、将来は我々のような大会組織委員会のメンバーとしてスポーツを支援する人やスポーツをする人、あるいは日本代表選手になる人が1人でも出れば、それこそが誇るべき「レガシー(遺産)」だと考えています。W杯では、県内の小中学校、高校の児童や生徒計約2万5000人を静岡で開催する試合に招待する予定です。
15年大会で活躍した元日本代表の五郎丸歩選手らが所属しているトップリーグ。ヤマハ発動機ジュビロ(磐田市)の選手たちも、普及に尽力しています。県内の小中学校へ出前授業をしたり、ラグビーを子どもたちに教えたりしています。特にラグビー特有の、品位や結束を大事にする精神、必ずしも体の大きな選手ではなくてもいろいろな特長に応じたポジションや役割があるということを聞くと、子どもたちは目を輝かせます。
ヤマハ発動機の前監督の清宮克幸さん(日本ラグビー協会副会長)は今年、女性と子どもに特化した「アザレア・スポーツクラブ」を創設し、第1弾として7人制女子ラグビーチームを発足させました。大会前から、「大会後」を見据えてレガシー作りに励み、素晴らしい取り組みをされています。
まずはスタジアムを満員にすることが、レガシー作りの第一歩です。
次回は8月9日に公開予定です。
小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われるW杯試合日程
<1次リーグ>
9月28日16時15分 日本―アイルランド
10月4日18時45分 南アフリカ―イタリア
10月9日16時15分 スコットランド―ロシア
10月11日19時15分 オーストラリア―ジョージア
小笠山総合運動公園エコパスタジアム
静岡県袋井市に2001年完成。収容人員は5万889人で、19年ラグビーW杯日本大会の会場では横浜国際総合競技場(7万2327人)に次いで2番目に多い。サッカーJ1・ジュビロ磐田やラグビートップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロなどが主催試合を行う。最前列には可動式スタンドがあり、より選手に近い位置で観戦を楽しめる。豊かな自然に包まれた、緑あふれる環境も特徴。JR東海道線愛野駅から徒歩15分。
ふじわら・なおひろ
1957年8月生まれ、旧竜山村(現浜松市)出身。県庁では観光交流局長などを務め、エコパスタジアムへのラグビーW杯誘致に尽力した。ラグビー経験はないが、慶大時代に社会人ラグビーの新日鉄釜石(2001年からクラブチームの釜石シーウェイブスに移行)の活躍や大学ラグビーを見て熱中した。「街中で『ラグビーW杯、もう少しだね』と声をかけられることが増えてうれしい」と手応えを感じている。18年4月から現職。
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