大会組織委員会 愛知・豊田地域支部長 杉山直樹さん
愛知県は「閉鎖的な地域」と指摘されることがあります。ラグビー・ワールドカップ(W杯)の成功を地域のPRにもつなげ、その印象を一掃したいです。
愛知には豊田市をはじめ複数の企業チームの拠点があり、ラグビー文化が根付いています。豊田スタジアムは2002年サッカーW杯日韓大会の会場に選ばれなかった経緯もあり、我々は並々ならぬ意気込みで開催地に手を挙げました。
豊田スタジアムは愛知県出身の建築家、故黒川紀章氏が設計した球技専用競技場です。メイン、バックスタンドの視界から支柱を排し、最大傾斜38度のスタンド席で観戦すると、臨場感あふれるプレーを肌で感じることができます。
準備は着々と進んでいます。照明をLEDに変更したことで照度が高くなり、多様な演出に対応できるようになりました。全ての席で均一に音を聞くことができるように音響設備を改修し、2台目の大型映像装置も設置しました。以前から芝生は高い評価を受けており、選手に最高のグラウンドを提供できると自負しています。W杯では東日本大震災の被災地、宮城県山元町で養生された「復興芝生」を使用します。
開催する4試合のうち3試合はナイターで、海外のファンを含め多くの方が愛知に宿泊することが見込まれます。ラグビーだけでなく文化に触れる観光も楽しみ、地域の魅力を知ってほしいです。
まずは「サムライ文化」。愛知県は、日本を戦乱の世から天下統一へと導いた織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の「三英傑」を輩出しました。国宝の犬山城(犬山市)、名古屋城(名古屋市)をはじめ、歴史ロマンあふれる史跡や名所を巡っていただくのも一興でしょう。次にみそ煮込みうどん、ひつまぶし、みそカツなどの「名古屋めし」。彩りは華やかさに欠けるかもしれませんが、味は確かです。食べ歩きを楽しんでください。
機運醸成にも取り組んでいます。豊田市のほか公認キャンプ地の名古屋市、一宮市などでは機を見てイベントを開き、地元の熱気は高まりつつあります。多くの方を迎えるW杯は、愛知で26年に行われる夏季アジア大会に向けても、非常に大きな経験となります。
W杯では日本戦のほかにも世界ランキング1位のニュージーランド、今年の欧州6カ国対抗を制したウェールズ、南アフリカなどの強豪が試合をします。最高のおもてなしで、世界最高峰のラグビーを迎えます。
次回は7月19日に公開予定。
豊田スタジアムで行われるW杯試合日程
<1次リーグ>
9月23日19時15分 ウェールズ―ジョージア
28日18時45分 南アフリカ-ナミビア
10月5日19時30分 日本―サモア
12日13時45分 ニュージーランド―イタリア
豊田スタジアム
2001年6月完成。Jリーグ・名古屋グランパスの本拠地で、14~16年にベストピッチ賞を受賞した。最寄りの名鉄豊田市駅からは徒歩約15分。豊田市駅から会場までの道には、スタジアムの設計を手掛けた故黒川紀章氏が設計した豊田大橋が架かり、一体感のある美しい景色が広がっている。
すぎやま・なおき
1967年2月生まれ、愛知県安城市出身。90年4月に愛知県庁入庁。2005年愛・地球博(愛知万博)では観客の輸送業務を担当した。ラグビーのプレー経験はないが、全国大学選手権を3連覇(82~84年度)した同志社大に86年度に入学すると、在学中は東京・国立競技場まで観戦に訪れるなどラグビー熱が一気に高まった。
文字サイズ 印刷 連載をフォロー コメント